2021年10月に合同出版から『わたしは黙らない-性暴力をなくす30の視点-』という本が出版された。この本を書いたのは性暴力をなくそうとする34名の活動家や専門職、ジャーナリスト、研究者たちだ。ぱっぷす代表の金尻カズナも「AVという性暴力」(p72-75)というテーマで寄稿している。2021年現在の性暴力の現状や課題、過去からの学び、世界の動き、今後の展望などを見渡すことができる地図のような本だ。
ぱっぷすスタッフの私がこの本を手に取ったのは、金尻が寄稿していることと、タイトルの「黙らない」という言葉に惹かれたからだ。私は性暴力について「黙ってきた」人間だ。黙ったままで平穏無事な生活を送ることができたら、ぱっぷすには来なかっただろう。性暴力によるダメージを自覚するのに20年近くかかってしまった。「女として見られてるってことじゃん」「このくらいで大騒ぎするの、ダサいよ」「減るもんじゃないし」など、被害者の口をふさぐ言葉が10代の自分に浸透していた。行き場のない怒りや無力感、自分を責める声、自分は”汚れている”という感覚、こういったものは35歳の私が抱える生きづらさと繋がる。
「黙らない」と決めたひとに会いたいと思った。いくつかの幸運な導きによって、ぱっぷすの活動を知り、スタッフに加わってから3カ月が経つ。面白い場所だなと思う。この団体にはいろんな個性のスタッフがいて、年齢やキャリアはまちまちだ。共通するのは性暴力に対して「黙っていられない」という想いがあることだと思う。性暴力や性的搾取に対して「許せない!」と怒り、被害者を貶める声に「おかしい!」と憤り、さまざまな課題を抱えた相談者に寄り添う方法を話し合う。怒るとお腹が減るので、誰かが持ってきてくれたお菓子とコーヒーで気持ちを切り替えて作業に戻る。
私はぱっぷすとの幸運な出会いがあった。そして、ぱっぷす以外にも性暴力をなくすための活動や発信をしているひとたちがいる。そういう人の言葉や活動を知りたい人は、この本を手に取ってほしい。「黙らない」ことを決めた34名の声があなたにも響くはずだ。
<この本に出てくるキーワード>
性被害 / 未成年への性暴力 / セクハラ / 就活セクハラ / 災害時の性暴力 / 教育現場での性暴力 / キャンパスレイプ / 強姦救援センター / 戦時性性暴力 / 慰安婦 / #Metoo / #Metoo以前 / #KuTo / フラワーデモ / 性犯罪刑法 / 性的同意 / 性虐待被害者 / 被害者バッシング / 痴漢 / 痴漢防止アプリ / AV / デジタル性暴力 / 性的搾取 / 性犯罪裁判 / 性犯罪刑法 / 刑法の問題点 / 性と生殖に関する健康と権利 / 性的マイノリティー / 少年・男性の性暴力被害 / 性暴力加害者処遇プログラム
『わたしは黙らない -性暴力をなくす30の視点-』
合同出版株式会社 2021.10.30発行 1500円+税
▼執筆者(敬称略)
伊藤詩織(映像ジャーナリスト)
上間陽子(琉球大学教授)
小川たまか(ライター)
北原みのり(作家・フェミニスト)
田房永子(漫画家)
寺町東子(弁護士)
仁藤夢乃(一般社団法人Colabo代表)
金尻カズナ(NPO法人ぱっぷす)
信田さよ子(原宿カウンセリングセンター顧問)
山本潤(一般社団法人Spring代表理事)
ほか 総勢34名が執筆
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