ぱっぷすに寄せられる被害相談が急増している。
2021年12月、スタッフのみんながかねてから感じていたことをぱっぷすのTwitterでつぶやいた。すると大きな反響があった。
「ジャーナリストにお願い。繁華街で性を売っている女性たちを取材するのも大切だけど、買う客を是非取材し報道して。家では夫であったり、父親であったり、息子であったり。そんな客たちが “やり逃げ”したり、生中出しを強要したり。妊娠した女性の中には東京の女性のための保護施設で出産したりしている 」(2021.12.4投稿)
このつぶやきに対して6586件のいいねが押され、共感・共鳴する人々によって瞬く間に拡散された。このつぶやきが大きな反響を呼んだのはなぜか?それは性暴力の報道に大きな偏りがあるからだ。被害者の姿を明らかにする報道・調査・研究には積み重ねがある。それに比べて加害者の姿は見えてこない。
「女性の性を買ったり、映像の女性を弄んでいるのはどんなひと?」
「買春者ってどんな男?パパ活のパパってどんな家庭生活のおじさん?」
「AVのユーザーってどんな男性たち?」
パパ活をする少女のイメージに比べて、買う男たちのイメージは湧かない。情報は常に性を売っている少女や若い女性たちに焦点が当てられてきた。流される情報の質と量がまったく異なる。ネットを介して急速に拡大するデジタル性被害の深刻さは目を覆うばかりだ。
2020年1月の相談件数は19件だったが、2021年の同月には3.5倍の68件の相談が寄せられた。2021年の年間の相談者500名を超すだろう。被害者は圧倒的に女性が多いが、男性の被害相談も増えている。若い自分の人生が滅茶滅茶に破壊されるのではないかと不安に怯えるのは男性だって同じことだ。寄せられる相談を通して、私たちには被害者の様子が見えてきている。社会の中の弱い環が突かれているようだ。
相談者の相談にのる時には、本人が相談したいと思っていることに焦点をあてて聞き取りをおこなう。「私がなぜAVに出演する決心をしたか」などを問わず語りに述べるひとは多いが、家族関係、職歴、学歴、経済事情だとかは必要がない限り聞いていない。半年から1年、数年の関わりのなかで徐々にわかってくることもある。
根底にあるのは若者の貧困だ。わずかなお金の工面に困って、風俗やAVに飛び込む女性たちの姿は枚挙にいとまがない。「居場所がどこにもない」「自分を大事だと思えず自暴自棄になってしまった」とか・・・。彼女たちの生きにくさはどこからくるのだろう。経済的な貧困だけでなく家族関係の貧困や人間関係の貧困が見え隠れする。
と、こう書いてみても、やっぱり私たちがリアリティを持って描けるのは買われる女性たちの姿だ。ことほど左様に買う側、需要の側の姿が見えない。この実態を掘り起こすのが社会的な大きな課題だ。性を売る女性のことを言う時には必ず買う側の姿形に迫ることを考えよう。
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